【些末なER診療】Painless Myocardial Infarction
こんにちは。Stayfoolish@研修医です。
さっそく本日の学びです。世にも恐ろしい無痛性心筋梗塞を経験しました。
- 冷汗のエピソードには、こちらも冷や汗をかくべし。TROPの重要性!
症例です。
58歳、男性。2日前からの嘔吐、下痢、食欲不振があった。来院日、近医受診したところ、医院の玄関で悪心が増悪し、冷汗があったため、救急搬送された。BP 150/70, HR 75, RR 20, SpO2 98ra、T 37.9。受け答えはしっかりしており、けろっとしている。
といった感じ。後から冷汗の情報を付け加えたものの、救急隊による「冷汗があったそう」という情報のみ。発熱があったため、PPE対応。
~わいの頭の中~
嘔吐、下痢、発熱。腹痛はないけど、消化器疾患、非消化器疾患といった感じでやっていこう。ウイルス性腸炎は限りなく怪しい。神経学的所見は大丈夫で、中枢神経って感じではなさそうだな。いや待てよ、の割には腹部所見があまりに乏しい、どこにも圧痛がないんだよね。うーん、困った困った。けど、General Vital問題ないから腹部CTコースでいっかな。
~Vgasが届いて腹部CTへ~
まじで正常、何もないの。本当に嘔吐、下痢あったんかいな?いやーまあ大丈夫っしょ。腹部CTはCriticalなのなさそうだなー。まあそもそも疼痛の局在ないし、何を絞って撮影したのかもわかんないんだけどねー。小腸の腸管浮腫あるからウイルス性腸炎でいっかな。帰る前に心電図だけとっとくかー。
からのがっつりSTEMI。下壁です。Mirrior imageも出てます。エコーでも動いてません。トロポニン>50,000です。オソロシヤー
すぐコンサルトして緊急PCIとなりました。
もう二度とこんな経験したくなく、とりあえず寝る前に無痛性心筋梗塞について調べておきます。
Full textは入手できずです。症例対象研究になります。仲田和正先生のようにまとめてみます。
最重要ポイントは次の4点です。
- STEMIの13%は無痛性。
- 高齢、女性、中国人、糖尿病に多い。
- 無痛性例は、失神、心窩部痛の主訴が多い。
- 28日死亡率は無痛性例の方が高い。
無痛性の方が死亡率高いのは、見逃されるからだと思いますね。気になったのは梗塞部位によって疼痛の出方に違いがあるのか、だけど全文読めずで残念。
今回の症例では、高血圧症、脂質異常症、喫煙歴とリスク高めでした。ECGして本当に良かった。怖いから高リスクではやっぱりRoutine ECGでもよいかもしれん。優先順位を考えて。
けど忘れ得ぬ1例になりました。今後に生かそう。
それでは。