【COVID19特集4】ガードを固めて、正しく恐れる。
こんにちは、stayfoolish@研修医です。
COVID19特集が続きますね。なんか毎日情報が入ってくるので忘れないようにするためにも、とりあえずここに残しておこうかなと。
今回は、医療従事者向け動画配信サイトCareNeTVにおいて、【Dr.岡のプラチナレクチャーCOVID19特講】が無料で3/29まで閲覧可能なのを受けて、簡単にまとめていきたいと思います。
医療従事者ならば必見です!いつも通りわかりやすく論理的に解説してくれています。
ここ4ヵ月ほど臨床を離れているので、復帰リハビリとして非常に有効でした。染みわたるー。医療従事者、特に医師として臨床決断の指針となります。
結論としては、題名の通り
ガードを固めて、正しく恐れる。
そして、いつもの風邪・肺炎の診療の応用だ。
岡先生に代わってざっくりまとめていきます。
ガードとは、身体的・精神的に分けられます。
身体的なガードとは、標準予防策の徹底です。もちろん接触感染予防策、飛沫感染予防策も行います。汗を除く患者の体液に暴露する可能性がある際には、フェイスガードも含めてしっかり防護しましょう!
精神的なガードとは、COVID19の可能性を否定しないことです。例えば、PCR陰性でもPCR陽性の感染者との暴露が明らかな場合、つまり検査前確率が高い場合は、偽陰性の可能性が非常に高いですし、PCR陰性だとしてもCOVIDの可能性は高いです。そういった場合には繰り返しPCR検査を行い、陰性であることを確認することが現実的な対処となります。一番やってはいけないことは、一回のPCR陰性でCOVID19である可能性を除外してしますことです。精神的なガードを常に保ちましょう!
COVID19の大半は軽症で、その場合は風邪と臨床症状は変わりません。鑑別ポイントは「経過」です。
よって、全身症状(発熱、倦怠感など)、上気道症状(咳嗽、呼吸困難など)を来しうる、つまり日常の風邪診療を徹底しましょうとのことです。風邪症候群以外の急性疾患が除外できたら、次に行うことは自宅療養です。残念ながら14%で重症化してしまいますが、現在のところ有効な治療法はありません。よって、感染拡大防止・院内感染防止と医療供給を重症例に集中させるという観点からの積極的自宅療養です。
PCR検査については
疫学調査の目的を除き、COVID19が蔓延した場合に無症状はもちろん、軽症者のPCR検査は行うべきではない。と
PCR陽性だとしても治療法はないこと、陰性のときに本疾患を除外できないことが理由です。
PCR陰性の場合に
・感染制御がおろそかになるリスク
・検査をすることでかえって感染が拡大するリスク
・患者集中による医療施設の疲弊
・一定数に生じるであろう偽陽性による混乱
・検査コストの問題
などのデメリットが大きいです。
陰性の場合にガードが緩みやすいのです。
予防と治療については、現在言われている通りです。
重要なのは、臨床医としてガードを固めて日常の風邪診療と肺炎診療を続けていくに尽きます。
僕は、岡先生の臨床感染症家として、日常診療の基本を中心としてガードを固めていく方針に、さすがだと思いました。
まだ、責任ある医療従事者として病棟に出ていません。COVID19との戦いは、短期戦ではありません。長距離をバテないように強い意志を持ち続けていかなければいけないと感じます。そのためにも、岡先生の日常診療の応用だという考え方は「ほんとうにさすがだなあ、なるほど」と思います。
一方で、PCR検査のパラドックスに言及せざるをえません。有効な治療法がない中で、PCR検査をやみくもに行うことは、その方法如何によっては感染拡大や院内感染を起こしえないことなどがデメリットとして挙げられていますが、疫学調査の一面としては、PCRを実施せざるを得ないということです。
ドライブスルー検査に関しては、東京という地域全体で行うことは物理的に不可能であると思います。現段階では、感染者のクラスターを徹底的に検査していくのが現実的だと僕は思います。
なんか最近文章が堅苦しくなってきた気がする。。っていうのもまだまだ情報収集に精一杯なのがばれちゃってる感じかな。。
もう少しで初期研修が始まるから緊張しているのかもしれないねー(笑)
ではまた!
【COVID19特集3】with コロナ という考え方 from Newspicks
こんにちは、stayfoolish@研修医です。
引っ越しの春!!ということで
新居の引っ越しの準備をぼちぼちと始めていますよ。洗濯機のレンタルをお願いしようと思ったんだけど、どの会社も2年レンタルだと買った方が安くなっちゃうんよねー。
メルカリとかヤフオフとかジモティっていう手段もあったけど、壊れてるのめんどくさいから普通に買おうかなー。
今回は、最近はまっているNewspicksで落合陽一さんを中心として、医療政策、感染症、社会学の専門家が
「オーバーシュート、重要局面」
という小池都知事の声明を受けてのLive Discussionが非常に面白く。
専門家の歯切れのよい説明と、落合さんの的確な鋭い質問を聞いていて痛快。
その中で落合陽一さんが「with コロナ」と発言していたのが印象的でそれについて今回考察してみます。
指定感染症という足かせ
結論から言うと、
「指定感染症」というフレーミングがあることで、医療崩壊を招く可能性があります。
厚生労働省のページですが、
端的に言うと、感染が判明次第、入院措置がマストなところが問題なのです。
現在では、感染しても80%の人が無症候、軽症で経過するというデータがあります。だから、こういった軽症例をいかに自宅でみるかが医療資源を重症例に注力できるかのポイントになります。
にもかかわらず、指定感染症であるので感染者の大多数の軽症例まで入院管理しないといけなくなるわけです。これは明らかにおかしいです。そういったデータがあるので、積極的に活用して、指定感染症としてではなく、新型コロナウイルス感染症・COVID19の位置づけを修正していく必要があると感じます。
LINE公式アカウント 新型コロナ対策パーソナルサポート
このLIVE配信では、LINEで罹患の有無のデータを収集できる
「新型コロナパーソナルサポート」が紹介されていました。
是非みなさんも調べてみてください。各都道府県で体制が整ってきていると思います。
友達追加して、質問に答えていくだけです。簡単カンタン
このような感染状況、国際情勢になってしまった以上は、検査前確率ゆうゆうの問題ではなく、死亡者数を抑えるという命題に向けてみんなが足並みを揃える必要があります。
死亡者数を抑えるためには、重症例に適切に医療資源を配分する。そのためには、軽症例は入院すべきではない。また軽症例の背後に隠れるクラスターを発見するためにLINEなどを利用して情報を収集すべき。そしてその情報を分析して次の対応に繋げるべし。
と考えます!
with コロナ という考え方
オリンピックも延期となり、感染者数が増加の一途を辿っています。
現段階で、感染者数がゼロになることは想像がつきませんよね。よって、コロナにうまく対処していかなければならないと落合さんは語ります。
一番難しいのは、ロックダウンや自粛の止め際です。今まで前例はありませんから。
前にも書いたことだと思いますが、国民がコロナを受容し、対処法を適切に把握するようになって始めて、コロナ収束が見えてくるものだと思います。
それには時間がかかると思いますが、時間しか解決してくれるものはないとも思います。医療従事者としてできることは、正しい情報を適切に伝え続けていくことかなと思っています。
しかしながら現在、ロックダウンが検討されている中で東京がどうなるのかが心配です。恐らく国家の下で緊急事態宣言がなされた上でロックダウンが施行されたとしても、日本においては強制力は発生しえないと専門家は言います。そんな法律はないからです。自衛隊が治安維持隊として効力を発揮する可能性はありますが。
民主主義を保ちながら、素早く刻々と変化する事態に対応することは非常に難しいことだと感じています。
次は政治について勉強してみたいところだが、もう少しで研修生活が始まってしまうというパラドックス!!
ではまた!
【映画短評】きっと、うまくいく
こんにちは、stayfoolish@研修医です。
今日は大学の友人のかいかい@研修医がブログを始めた報告をくれました!!
嬉しすぎる!!
継続が一番の課題ですので、かいかいと励ましながら出来たらいいなと陰ながら思っております。コツコツ続けていきましょい。最高のモチベーションになりました。
研修が始まる前に読みたい本がいっぱいあったのですが、まだまだ読めてない本が、、、
ちょっと計画性が足りなかったです。読むだけならできるけど、アウトプットとなると厳しいですね。けど、アウトプットをブログとして記録化してみて思うことは、本を端的に理解し、それを実践してこそ読書の醍醐味なのだと思うようになりました。
行動経済学、医療行動経済学については3月中にまとめます!と宣言してみたり
本日は、インド映画「きっと、うまくいく」の映画短評をします。
結論から言うと、同じインド映画で大好きな「スラムドック$ミリオネラ」を凌いでしまいました。登場人物のキャラクター、ストーリーともに最高でした!!
さっそく短評していきます。
どんな映画?
2009年公開で、当時インド映画歴代興行収入1位を記録しています。
工科大学を舞台にした、教育問題をテーマにしたコメディヒューマンストーリーです。
どんなストーリー?
工学に好奇心旺盛で学ぶことが大好きなランチョー、動物を撮るカメラマンに憧れるファルハーン、苦学ゆえに神に祈ることをやめないラージューの3人が工科大学に入学し、ルームメイトに。
ランチョーは持ち前の自由奔放で権威に恐れることなく、競争、権力、富、名声の権化ともいえる学長に真っ向から対立していき、その姿に他の2人も共感し、巻き込まれていく。結局、型にとらわれない勉強を続けたランチョーが首席で卒業することとなった。
そして10年後、思い出の地で居合わせたファルハーンとラージューは、卒業後消息不明のランチョーを捜索する。果たしてランチョーは、大学時代から10年を経て何をしているのか、
そこは実際あなたの目で確かめてほしい(笑)
感想をつらつらと
メッセージ性が多く盛り込まれたコメディであるが、一番は「教育」についてだろう。
主人公のランチョーは学長に向かって
「僕が知りたいのは点数の取り方ではなく、学問なんだ。競争としての学問はつまらない。」
とせまります。いやまあこの迫り方がほんとに痛快で!
この作品で描かれているのは、競争が目的になってしまっている学問のあり方についてです。この点を考察します。
確かに学問を理解できているかどうかを客観的に見るためには、点数化は有効だと考えます。それは特に、入学試験や資格試験においては公平性という点においても合理的であると考えます。
この作品で描かれているように、点数を取るためだけに勉強することは果たして悪いことでしょうか。
僕は、必ずしも真っ向から点数を取るための勉強を否定することはしません。確かに点数を取りたいだけが目的ならそれは理解できません。何がモチベーションなのかいまいちわかりませんよね。目標を実現するために点数が必要となったときには、勉強をして点数を取りに行くことは、そこに至る積み重ねの努力を含めて、僕は必ずプロセス自体に価値があると思っています。しかし、あくまで点数は通過地点であって、それ自体に執着する必要は全くないと考えています。
今、考察したのは基本的には受験勉強ですかね。僕は医学部に入るまで2浪していて、どうしても苦手の国語が克服できずにどうしようもなく、点数を取りに行くためだけの国語の勉強を余儀なくされました。あれはほんとに苦痛でしたねー。
けれども医学部に入って、系統講義(各診療科について)を学び始めたときから全体を俯瞰して体系的に覚えていくことの楽しさを知りました。病棟実習に出ると知識を働かせて「使える知識、話せる知識、説明できる知識」の勉強にはまりました。医学、とくに臨床推論が好きになっていました。
自然と好きになっていくことができたので、4年生からの勉強で点数を取りに行く意識なく楽しく勉強することができたのかなと振り返って思います。僕は過去問や一問一答を詰め込むことを頑なに嫌って、自分の気になったことや目の前のProblemを解決していくことを中心に取り組むことに夢中になってました。詰め込み教育に小さく反抗している自分がいました。
卒業してみて思うことは、医学に関しては幅広い視点を持つように意識してきたことはよかったと思っている反面、医学しか学んでこなかったことを本当に後悔しています。一般的な教養、ニュースを読み解く力や本当に全力で遊ぶ(チャレンジしていく)ことはできていなかったと反省しています。
6年生で多く実習をする機会があったので、その際に医学以外の視点を持つことやコミュニティーの重要性を学べて本当に良かったです。ラストチャンスでした。
よって勉強は幅広く自分の気のすむまで気長にやることが大切かなと思ってます。
あくまで点数はpassしてしまえば何も役に立ちませんし。
この映画でもう一点気になったのは、インド人の文化と宗教についてです。
またですか、、と、2月にインド行ってきたので、どうしてもそこで学んだことをベースとして映画を見てしまいます。
この映画では、命の誕生のお産のシーン、結婚式、葬式などと生と死がダイナミックに描かれます。それを起点として物語が急変していく様は、生と死に関わるイベントがいかにインド人にとって密接なのかを表していると感じました。
また、おそらくヒンドゥー教がベースの作品であるにも関わらず、カースト制度を否定している(カースト制度はヒンドゥー教においては暗黙の了解とされている)ことやヒンドゥー教においてあまり好ましく思われていない飲酒(第二宗派のイスラム教では禁忌とされている)シーンが多く描かれていたりと、宗教やしきたりのみにとらわれない生き方からの脱却を感じさせるシーンが多かったのも印象的でした。
一方で、インドは資本主義に一直線で向かおうとしています。
残念ながら、実際的に格差がどんどん生まれていくのは必至だと思います。インドではお金がないとヒンドゥー語しか教育されず、高校大学は基本的に英語で行われるので、同じ土台にも立つことができません。
しかしその中でも「All is well」「きっと、うまくいく」と事態をポジティブにとらえ、自分のやりたいことの中に幸福を見つけていくという本質的なものをこの作品から見出すことができました。
他と競争して比較される個ではなく、自分のやりたいことをして生きる主体性としての個の価値を再認識しました。
最後に一番好きなシーンを発表します!!
カメラマンのファルハーンが子供をエンジニアにさせたい親を説得させて
「ラップトップを売ってプロのカメラを買わないとね」
のシーンでした。あのシーンは反則です。涙なしには見れません。。。
以上2点、教育とインド文化背景を考察してみました。
はたまた!!
【COVID19特集2】新型コロナウイルスは段ボールがお好き!?
こんにちは、stayFoolish@研修医です。
今日は暑かったですね。
僕の住んでいる岐阜でも開花宣言がされたそうで。5日も平年より早いらしい。
へ、平年!?気象予報士の血が騒ぐぜ(嘘)
こんな僕も気象予報士を目指していた時期がありました。
2回受けましたが、5割いかないくらいの出来であっけなく断念、、、
7割で合格だったと思います(笑)
独学ではちょっと限界があるのと、モチベーションが続かなかったのと、大学の試験が忙しかったのと、、
言い訳ばかりやーー
平年とは過去30年の平均値です。
10年ごとに更新されるので、今年2020年は更新ですね!
今回もNEJMで面白い記事を見つけたのでそれを中心にボソボソ
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2004973?query=featured_home
N van Doremalen, et al
Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1
March 17, 2020, NEJM
趣旨は
2003年のSever Acute Respiratory Syndrome (SARS)の原因であるSARS-CoV-1と今回のSARS-CoV-2の飛沫感染力、接触感染力を比較してみました!
結論は
・SARS-CoV-2のほうがCov-1より段ボールに滞在時間が長かったこと。(バラツキが大きく解釈に注意が必要だが)
・飛沫(しぶき)での滞在時間は変わらず。半減期は1.1-1.2時間ほど。
・CoV-1、CoV-2ともにステンレス鋼とプラスチックに親和性が高い。5.6時間と6.8時間。
結局はCoV-1とCoV-2で飛沫感染、接触感染共に大差なしと言えそうな結果です。
段ボールだけは違いましたが、、
Amazonを中心とした宅配サービスの普及が感染拡大に寄与したんですかね。
あまりにも短絡的すぎますが、
だとしたら段ボールを扱う配送業者にこそマスクが必要ですね。
驚いたのが
1日にわたりウイルスがものにひっついていることです。
今回は、銅、段ボール、ステンレス鋼、プラスチックに関してでした。
高頻度接触面は、日常生活で多く潜んでいます。
ドアノブ、エスカレーターの手すり、カラオケマイク、つり革などなど
適当に思いついたやつですが、
そこを本気で消毒しようともウイルスやら何やらはしつこいってことですね。
重要なのは、自らの手洗いを充実させること!これに尽きますのだ。
あとは日ごろから愛用させていただいているYoutubeからCOVID19関連をチクチク
Osmosisというチャンネルで、
日常の勉強ツールとして医学生時代から見てるオススメのやつです。
簡潔に視覚的にまとまっていて、わかりやすい英語で話してくれるので
医学英語学習にもピッタリなのです!
今回の動画の最重要ポイントは2点。
・流行曲線のピークを抑え、平坦化させること。
・医療供給体制を整えること。
医療資源には限りがあるので、適切に対処しないと医療崩壊を起こしかねません。
濃厚なしぶきが飛び交うようなイベントを自粛、個人個人の手洗いの励行を促すことで、流行曲線を平坦化させることができます。
また、不必要な医療機関へのアクセスを避けるためのシステム作りや適切なトリアージを行うことで医療供給体制を整えることができます。
医療従事者向けの検査、特に画像に焦点を当てたOsmosisです。
驚いたのが
RT-PCRの感度が95%まで向上したことです。
この検査精度なら除外目的にPCRを乱用する意義も見いだせるレベルだと思います。
もちろんCTは診断には使えず、今まで通り症例を絞って使っていきましょうと。
以下の動画は、ホリエモンチャンネルでいつも観させてもらってます。
米国国立衛生研究所(NIH)の研究員、峰先生とホリエモンの対談です。
対談というか、一般代表のホリエモンが専門家の峰先生に質問しているといった形式です。
非常に面白く聞かせて頂きました。
二人とも話がさくさく進んで聞きやすい聞きやすい。
社会的許容、インフォデミックの話題が上がっていました。
ここまでズバッといってて驚嘆の一言です。こんな情報をみんなが聞いてほしかった、てか自分も知りたかったし、周りに伝えたかった、、、
現在のCOVID19の感染拡大状況をどこまで許容できるかが
これからの経済へのダメージを最小限にして立ち直れるかどうかのカギとなります。
ホリエモンも言ってましたが
スマホの大衆化によって、SNSで責任なく一般市民を煽るような情報が流れ
それによって今までにない状況が作り出されました。
いわゆるパニック状態です。実際の感染以上にパニックの方が世間を賑わしていた印象があります。
まずやらなければいけないことは正しく情報を集めることです。
僕は医療従事者として、正しく情報を収集して自分なりにできる限りの情報発信をしないといけないような使命感が芽生えました。
芽生えました、です。
感染症の先生をはじめ、1次情報を的確に読み、発信している先生方多くいます。本当に素晴らしく畏敬の念を抱くばかりです。
その情報を理解し、次の世代に起こりうるパンデミックの際に、自分が率先して情報発信できるようになりたいと思いました。
全くの力不足です。スタートラインにも立てていません。
とりあえずは日々学んだことをまとめていきたいと思います。
今日は真面目な感じになりましたね(笑)
明日は阪神大賞典とスプリングステークスがあります!
楽しみ楽しみ、個人的にユーキャンスマイルという馬が好きなので応援したいと思います。けど、パドック次第ですかね。
またまた
【本業の医学】【COVID19特集1】NEJM:重症COVID19に対するHIV治療薬の有効性:RCT
こんにちは、stayFoolish@研修医です。
冬着はもう暑い季節になりました。
そう、開花宣言したみたいですね。4月には散ってそうだなー。
まあ、花見会はさすがにコロナさんの影響でできないでしょうな。
コロナによる国際情勢の行く先はよくわからないことになっていますが、
季節だけはいたずらに過ぎ去っていくようです。
今回はNew England Journal of Medicine(NEJM)なるものを読んでみます。
医学界では最も権威ある雑誌になります。
ファッション雑誌界の「with」
NBAの「ステフィン・カリー」
競馬界の「クリストフ・ルメール」
医学界の「NEJM」
みたいな関係ですね(笑)
NEJMは、アプリでweekly surmaryなるものを配信しています。
週一回、木曜日に25分くらいのpodcastですかね。
とりあえず、これ聞いとけば遅れないな、と思って。
COVID19で気になったことあれば、やってきましょうかね。
さあさあ、内容でございます。
A Trial of Lopinavir-Ritonavir in adults Hospitalized with Severe Covid-19;
Bin cao, M.D, et al; March 18, 2020, NEJM
http://https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2001282?query=featured_home
論文背景
SARS-CoV-2によるウイルス感染症COVID19におけるHIV治療薬(ロピナビル・リトナビル)の有効性は明らかではない。
ので、今回重症例に限ってやってみました、とのこと。
きっかけは、2003年SARSにおいて同薬が重症化予防、具体的にはAcute Respiratory Distress Syndromeや死亡、に効果が見られたから。
MERSのときは、症例不足もあり、結局よくわからんかった。
LOTUS Chinaとトライアルが名付けられた模様。
僕の大好きなコーヒーのお供でございます。
ちなみにLOTUSは日本語で蓮。
また、ギリシャ神話で出てくるよう。
現世を忘れ夢心地になれると言われる実をつける植物だそうで。
たしかに、疲れた時の現実逃避の味がするお菓子です。オイシーノヨホンマニ
*ロピナビル・リトナビル(カトレア®):プロテアーゼ阻害薬
方法
・open-label RCT。
・武漢のJin Yin Tan Hospitalにて。
・参加基準は以下全てを満たす。
1. 18歳以上の男女(妊婦除く)
2. PCR陽性で胸部CTで肺炎像がある。
3. SaO2が94%未満、もしくはP/F 300未満。
・ロピナビル・リトナビル群(400 mg/day)と通常ケア群に無作為割付。
・14日間。
・Intention to treatment解析。
Primary Endpointは、臨床的な改善に至るまでの時間。
Secondaryとしては、28日の死亡率。
open label RCTとは、介入群と非介入群の各々が受けている治療を知っているということ。
まとめると、
HIV治療薬で改善するかどうかがみたいということですな
それを改善に要する時間で比較しようと
死亡率が高くないから、死亡率の差を比べるのではなく
改善までの時間で有意差を狙ったのでしょうか。
ちょっとわかりませぬ。
結果
・Primary Endpointの臨床的な改善に要する時間は両群で有意差なし(ハザード比1.31 (0.95-1.85), P=0.09)
・28日死亡率は有意差なし。 (19.2% vs. 25.0%; difference, −5.8 percentage points; 95% CI, −17.3 to 5.7) or the modified intention-to treat population (16.7% vs. 25.0%; difference, −8.3 percentage points; 95% CI, −19.6 to 3.0)
・ICU滞在期間は介入群で短縮。(median, 6 days vs. 11 days; difference, −5 days; 95% CI, −9 to 0)
・14日時点での臨床的に改善した患者の割合は介入群で増加。 (45.5% vs. 30.0%; difference, 15.5 percentage points; 95% CI, 2.2 to 28.8)
・治療中のウイルスRNA量は両群で有意差なし。
・介入群で悪心嘔吐、下痢などの消化器症状の副作用がみられた。
考察
ロピナビル・リトナビルは通常ケアに比べ、臨床改善に至る時間、死亡率、咽頭のウイルス量、はともに変わらない。
ここからは僕の意見も交えて考察します。
本論文では、PCR陽性で肺炎がある症例に対するHIV治療薬の有効性を論じた。
有効性とは今回は臨床改善時間、死亡率、ウイルス量のことであった。
重篤な副作用がロピナビル・リトナビル群で増加していないため、安全面では担保されている。
また、臨床改善率(改善度の割合)やICU在院日数の改善がみられていることより有効性は、いまだ残している。
つまり、重症肺炎例において害はないが、効果はあまり期待できないということができる。
一方で、死亡率を改善しないため、あえて使う必要もないという意見もあるだろう。もっともだと思う。
注意すべきは、このトライアルは肺炎になってからロピナビル・リトナビルを投与されたという点であると考える。
COVID19による肺炎は間質性肺炎がほとんどで、発症から2週間で重症化することが問題視されている。つまり肺炎がCTで認められてからでは「すでに時遅し」かもしれない。
新たなトライアルが必要だと著者も言っている。
早期からのロピナビル・リトナビルや他の治療薬が肺炎進展予防に効果があるかどうかが個人的には気になるところだ。
ざっくりまとめると
肺炎になってから薬(HIV治療薬)を始めても効果が乏しい
といってもよいだろう。
【医学目線で書評】高校生からわかる「資本論」
こんにちは。stayfoolish@研修医です。
@研修医に変更になりました‼‼
@医学生の期間は知る人ぞ知るって感じ(笑)
先日、国家試験の発表があり、本日保健所に免許申請をしてきました。
ちゃっかり60,000円を収入印紙として納めまして、、
合格者が10,000人とすると
10,000×60,000=600,000,000
ロクオクエンロクオクエン
こんなことはさておき、
4月から研修医として日々学んでいきたいと思っております。
責任ある病棟実習、コツコツと精進ですね。
前回の【医学目線の書評】が自分でも全然わけわからないこと書いてたの反省。。
だって、難しいのだもの。
書いていくうちにうまくなっていくっしょ!と楽観。
今回は、これです。
著者について
みなさんおなじみ池上彰さんです。
以前も池上彰さんの書籍を読んだことがありますが、
「反則級にわかりやすい」んです。
Youtube大学の中田敦彦さんがそう言われるのもわかります。
個人的には、入門はマンガもしくは池上さんとしちゃいたくなるほどわかりやすいです。
もちろん池上さんと親しいわけでもなんでもありません。(笑)
そこだけは断言しておきましょう。
注意すべきは、なんでもかんでも池上さん任せにしないことですね。
読解力を養わないといけない今後の世の中ですし。
けれど、さすがに医学だけかじったばかりの研修医には
「資本論」の原著を読むのは、超絶恐怖でした。ムリデショー
池上さんの前にまずマンガから。
父親を資本家にボロボロにされ、復讐を誓った主人公が
いつのまにか自分自身が資本主義の怪物と化した産業革命後のイギリスでの物語。
父親が資本家に「クビだ」と言われたのに
自分自身が資本家となり、労働者に対して「クビだ」と告げているのが、表紙です。
池上彰さんについてピンポイントレビュー!
座右の銘は
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
趣味は地図の収集、ダジャレだそうな。
本は本業だそうです。
賢者は歴史に学ぶは刺さりますねー。
作品の概要
「父が娘に語る経済学。」でもふれたように
資本主義によって格差は今もなお拡大し続けています。
ごく一部の資本家が労働力を搾取してどんどん巨大化していくのを見守るしかないのか。
そもそも資本主義ってなんなんだ!?
(僕の心の中です)
商品から考えよう
マルクスさんは、資本主義を考える上でまず「商品」から考えようといきなり提案してきます。いきなりです。
確かに全てのものが値段がついてるのは、どうして?しかも100均なんかで売られてるものってホントに等価なん?
って思ったことはみなさんありませんか?
マルクスさん曰く、
商品には価値があり、価値の裏には労働あり、と
使用してプラスにならないものは価値があるとは言えないよね。
その価値を生み出しているのは、労働だというのです。
つまり労働の量が価値の量を規定しているのです。これを「労働価値説」といいます。
商品の裏に隠れた労働ですって。
実際意識するとスーパーマーケットにいったときの商品の見方が変わりました。
あじ一匹100円、靴下100円、、
同じ100円なのに、その裏にある労働の種類は違うのに、相対的には100円で一緒なのだ
という社会が現実にはありました。
知らず知らずのうちに生きていたのです。
また、価値を決める際に「分業」が生まれました。
分業がなければ、交換価値は生まれません。
それぞれの得意分野で効率的に生産した商品を交換するのが、自然ですよね。
ここまでをざっくりまとめると
世の中って商品ばっかだよね、商品ってなんだろう。
価値があるから商品なのか、価値の裏には労働があるのか。
なるほどなるほど。
労働力も商品なんよ
資本とは、簡単に言うとお金の集まりといいます。
資本家とは、お金を増やす人のことをいいます。
商品を集めてつぎはぎつぎはぎして新たに商品を生産し、お金を増やすことが資本家の役割です。
今までの流れを汲むと
商品は労働力なので、過去の労働力に新たに労働力を付け加えて、新たに商品を生産し、それを売ることでお金を増やすのです。
ここで新たに生まれた価値を「剰余価値」といいます。
ということは、資本家が新たに生み出す価値は、新たな労働力ということになりません?
驚くべきことに、労働力を買っているのが資本家の現実なのです。
こういった図式になります。
ここで問題なのは、
労働者は自らの肉体である労働力を売り物にしている点です。
資本家にとって、労働力に過ぎないのでいくらでも替えがききます。
しかし、労働者にとっては唯一無二な労働力は捧げるほかありません。
法的には平等で、等価交換、理論的にはそうですが、
実際的には、資本家に労働者はかなうはずはないのです。
また労働力は商品なので、その価値は変動します。
労働市場というものが存在するように、資本家と労働者の需要と供給のマーケットがあるのです。
まさしく労働力が商品として売られているのです。
以上をまとめると
資本家は、労働力を集めて集めて搾取し、新たな価値を作り出していきます。
その動きはとどまることを知りません。
大量生産の果てに、失業者が
資本家は労働力を買います。
その労働力自体が新たなお金を生み出すからです。
よって労働力を搾取すればするほどもうかるのです。
言い方がかなり悪くなってすみません。理論上はそうなってしまうのです。
立場的には、資本家>労働者です。両者の争いは必然的です。
労働者はチームを編成し、労働組合を作り、資本家と対立を起こします。
これも必然的な流れなのです。
ここの部分の資本論の原文です。
「資本は社会によって強制されない限り、労働者の健康と寿命に配慮することはない。」
政治、法律によって、労働者は正当に守られるようになります。
皮肉ながら、あくまで資本家と労働者はもともと対等な関係であったはずなのに、、
分業して価値を生み出すことは少しふれました。
みんなが分業して大量生産することが、商品生産のコストを下げ、結果的に労働者の賃金を下げることに繋がっていきます。
賃金が下がることに反対した労働者の反乱を抑え込もうとするのも資本家の仕事となるのです。
その後、機械が登場します。
機械は人間の労働力よりも効率的に作業をします。その上、人間から筋力を使う労働を完全に奪い取ります。
それによって、女性や子供も働くことができるようになり、労働力の供給が増えるのです。
つまり、機械の導入によって生産コストは下がり、労働力はさらに安くなるのです。
どんどんどんどん格差が生まれて行ってしまいます。
労働力が安くなると、生活が厳しくなる人が増えます。
これはつまり労働力の供給がさらに増えていることになるので、どんどんどんどん労働力は安くなっていってしまうのです。
これが現在起こっている働いても稼ぎが十分でなくなってきている原理になります。
資本主義は格差を生み出し、失業者は必然となります。
以上をまとめると、
商品には価値がある。
価値は労働から成る。
労働者が労働力を提供する。
分業が価値を最適化させる。
工場が作られ、大量生産する。
商品生産コストが下がる。
労働者賃金が下がる。
資本家は資本家をも共食いするようになる。
格差が拡大する。
失業者が生まれる。
僕なりにまとめるとこういうことかな。
資本主義って結局大丈夫なん?
今まで、資本主義の欠点ばかりに焦点がいきがちでした。
労働力が分業することで最適化されることにより、経済が豊かになってきたのは
紛れもない事実です。
また、アリストテレスが言うように、人間は社会的動物です。
資本主義社会には、分業が欠かせず、お互いの協力が必須となります。
みんなで協力して大きなことを成し遂げていくのは、社会的動物としての最高の生きがいになるはずです。
また、分業に必要な能力を身に着けること、つまり専門性を持たせるような教育が充実することにもつながります。
現在、なにげなく行われている教育は資本主義経済を豊かに生き抜くためだと言い換えることもできるね。
しかし、マルクスは資本主義経済には「最後の審判」が下るという。
資本主義が発展することにより、生産性が向上する。
それがごく一部の独占資本化だけに集中していると、経済は決してうまくいかなくなる。
あるいはものすごく不満を持った、力を持った労働者たちが増えてくる。その労働者たちの不満が高まるとそこで革命が起こる。
マルクスは、高度に資本主義が発展した末路を予想していたのだ。
考察・批評
商品を分析することから始まり、労働力が商品となり、それが資本主義のエネルギー源として搾取されていき、資本主義という血まみれの怪物ができあがっていく過程がよくわかりましたね。
資本主義は利益追求を第一に考えているので、基本的には消費活動をしなければ、経済は成長しないという現実もあることを知りました。
「日本は世界で唯一成功した社会主義」
と言われていたことがあったそうです。
高度経済成長前において、マルクス経済学を勉強した官僚達が
「労働者の権利を守らなければいつか革命が起きる」
と考えていたため、企業は労働者に対して手厚い福利厚生を施した。
これが、終身雇用制に繋がっていたのではと思いますね。
誰でも長い間勤務していれば、自ずと給与が上がっていくことは、第一に競争が激化しないことに繋がります。
競争が激化することは、資本主義の大好物です。
その分生産コストが引き下げられ、労働者の賃金も結果的に安く済ませられるのですから。
近年、派遣切りを始めとした就職難や低賃金で苦しむ人々が増加したのは、
国がむきだしの資本主義を改良すべく、公共事業を多くし、国家公務員を増やし、社会福祉に注力したのにも関わらず、近年その規制が撤廃されたからだと指摘されています。
本当に一口では語れない、難しい問題だと思います。
医学目線での感想を少し。
資本主義において、利益追求が第一です。
医学において利益追求を第一とするのは明らかにまずいです。
治験においても、企業主導から医師主導の流れになっていますし、
COI(利益相反)も厳しくなってきています。
(まだ現場に出ていないし、日本の医療現場の現状を知ったかぶりしているだけかも)
利益を第一として薬を売り込みにくる製薬会社の巧みな罠に気付かないといけません。
これができるかどうかがまず医師として一人前になれるかの最初のステップかなとも考えています。
批判的吟味ですかね。
その一方で、皮膚・放射線・病理の画像診断に関してはNew England Journal of Medicineでも5年以内に一般化しうると言われています。
まさしく、資本主義の凌ぎの削りあいでシェアの奪い合いが始まりますね。
けれど、AIを始めとしたDeep learningが、果たして医師、患者さんにどのような影響を及ぼすのかを考えなければいけないと思います。
今のこの猶予ある時間でこそ考えておかないといけないと思います。
また、そこに自分の将来やりたいことやるべきことが見えてくるかもしれないとも考えています。
話は逸れましたが、
資本主義と医療の接点はちょっと考察が難しかったです。(笑)
まとめ
資本主義によって格差は拡大を続け、ついには革命が起きる。
僕なりの「資本論」の短すぎるまとめです。
インドに行ってきて、感じた格差社会を
歴史、宗教、経済、資本論で考察してきましたが、
これからGDPが成長を続けるアジア、アフリカ諸国が今のアメリカや中国とどのような関係になっていくのか、
なんとなくわかったような気もします。
いや言葉にはできません。
もっと勉強します。(笑)
【医学目線で書評】父が娘に語る経済の話。
こんにちは、stay foolishです。
【医学目線で書評】シリーズが始まりました。
書籍の紹介とざっくり概要、吟味、をしていきます。
今回は、インドで乞食を目の当たりにしたことがきっかけで
「格差」ってなんだろう。どうしてだろう。
経済的に解決できる問題なのか。そもそも経済ってよくわかってないし。
ということでチョイスしました。
個人的に、経済学の本!を選んでもよかったのですが、概略をつかみたかったもので。
余談になりますが、ある分野の本を選択する前に、漫画版をあらかじめ読むようにしています。
書店でサクッと読んでその分野に興味が持てるかどうかの「ふるい」みたいな。
漫画版は視覚的に印象に残りやすいので、侮れないです。
著者について
ギリシャで財務大臣を務め、ギリシャの経済危機を経験。
EUから財政緊縮策を迫られるなかで、大幅な債務帳消しを主張し、世界的な話題に。
現在はアテネ大学で経済学教授を務めています。
作品の概要
本のタイトル通り、著者が10代の娘に向けて
「経済についてきちんと話すことができるように」という想いから、
できる限り専門用語を使わないで、経済について語ったものです。
よって、経済学のド素人の僕にもわかりやすいないようになってました。
この本は
「この世の中には有り余るほどおカネを持った人がいる一方で、何も持たない人がいるのはなぜだろう?」
という疑問を掘り下げていくことに終始します。
いま、僕たちが真剣に考えなくてはいけないのは、資本主義についてなのです。
5テーマに分けて解説しますが、
結論は、産業革命で余剰が拡大したことに伴い、「交換価値」を主義とする市場社会が生まれた。その一方、環境を「交換価値」として扱い、破壊し続けているという問題がある。その解決策は、金融政策の決定過程を民主化することだ、と読み取りました。
キーワードは2つ
・余剰
・交換価値と経験価値
理解しがたいところをざっくり掘り下げます。
「余剰」が市場社会の原点
「アボリジニはどうして侵略されたのか?」
この答えは「余剰」を手にしたからだと著者は言います。
どういうことか?
人類は遠い昔は、狩猟をして生活していました。
永遠に狩猟で生活できたわけではありません。環境によって獲物の量が元から違います。
環境に恵まれない国では、早々と獲物不足に陥ってしまいます。大ピンチです。
このとき、「農業革命」が起きました。自分たちで作って自分たちで食べようと。
それによって狩猟生活では存在しなかった、「余剰」が生じます。
この余剰が後に通貨や国家統制を生み、市場社会が形作られていきます。
市場社会に武装された国家による侵略には、アボリジニはかなわなかったのです。
「交換価値」と「経験価値」
交換価値とは
全てのものが定量的に測られる=すべてのものが「商品化」される
経験価値とは
値段で測ることができない、親密さや絆の証
市場経済は、交換価値が経験価値を打ち負かして成り立ったものです。
歴史的背景に戻ります。
市場社会は、「格差」を生むようになります。
ごく一部の人が利益を労働者から搾取するようになっていくのです。
この格差が、「産業革命」によってものすごい規模に拡大してしまうのです。
蒸気機関によって労働力がパワーアップされ、その利益は労働力から搾取され、資本家のもとへ集まることになります。
市場社会をざっくり
市場社会と政治は切り離せないものです。
癒着があると言ってるわけではありません(笑)
市場社会は、政治によって統制がとれていないと成り立たないのです。
つまり、民主的な政治判断の下で、ある程度の安全が担保されているのです。
企業が借金を返済できないときは、国が面倒を見るしかありません。
(中央銀行がパッとお金を刷ってくれます)
国家が安定をもたらすことに成功すればするほど、借金を生み出しやすい安全な環境が生まれ、
銀行はますます活発にカネを貸し出すようになります。
こうしてカネは市場社会を回していくのです。
安定してると思いきや
この市場社会というのは、不安定です。
この不安定さは、決して解消されることはありません(笑)
それは市場社会を形成しているのが人間そのものだからです。
単純化すると
景気がよくなったとみんなが信じ込めば、株を買ったり、モノを買う
つまり、経済が循環していきます。その逆もしかりです。
みんなが信じ込むことがミソなのです。ここには、ニュースがかなり影響してきます。
フェイクニュースを信じる人がいて、集団で同じ行動に出れば、それだけで市場社会は揺れ動いてしまいます。
つまり
市場社会で利益を出そうとしている起業家は、他の多くの人たちがどう考えているかを憶測し、その憶測に動かされているのです。
みんなが何を信じ込むかが市場社会を動かすのですね。
環境と市場経済
皮肉な話がある。
山火事が起こると市場社会は間違いなく活性化する。
消火活動、とそれに伴う燃油の消費、インフラの工事、など
経験価値であったはずの環境が交換価値として存在するようになった。
人類は利益追求のために、環境を食い物にしているのは、まぎれもない事実である。
どうすればよいか?
環境を全て交換価値として所有すればよいという考えがある。
全て購入できれば、それ以上の管理はないし、その利益を株のように分割すればよいのではないか。
かろうじてまだ残っている環境の経験価値を一つ残らず交換価値に変えるというのだ。
大切なポイントは
その運営は市場社会ではなく、民主主義に任せるべきと、著者が主張しているところだ。
市場では富の多寡によって、もつ票数が決まってしまうからだ。
これは、お金持ちによって地球自体が所有され、利用されることに直結しかねない。
民主主義は不完全で腐敗しやすいが、ただひとつの解決策に他ならない。
考察・批評
この本のタイトルは
父が娘に語る
「美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい」
経済の話。
非常に読みやすく、歴史的背景や具体例を含めていて興味深かったが、
2回目読んだとき、深い!そこまで壮大な話をしていたのか!
と感激しました。
しかし、あまりに深く壮大なので、まとめるのがかなり難易度高めでした。
書評慣れてきたらもう一回まとめたいと思える一冊でした。
医学目線で感想をつらつらと。2点!
まずはCOVID-19。
現在COVID-19が地球上の経済をかき回しています。
SARS-CoV2によるウイルス感染症です。主な死因は肺炎です。
感染経路は一般的なコロナウイルスと同じく、飛沫感染と接触感染だと言われています。
くしゃみをしたしぶきを触って口にもっていくことでウイルスが体内に侵入します。
よって一般的には、マスクをしていても空気から感染するわけではないので、予防には効果はないです。目から口にかけてのTゾーンを頻回に手で触れることが危険なのです。
一方で、感染者のサージカルマスクは、飛沫感染対策として必要だと言われています。
今回はこの辺でやめておきます(笑)
何が言いたいかというと、
マスクは感染予防のために効果はないというエビデンスがあるにも関わらず
大衆は不安に駆られてマスクの大量購入、転売、等々をするのです。
みんながやるから
という思考が経済を動かすのです。
著者が経済の不安定さは、人間そのものだと著者も言っておりました。
決断における精神心理的な面白さを感じました。
患者さんの決断理由に思いを馳せるのは、大切なことですね。
また先日、トランプ大統領が
「フェイクニュースのせいで、NYダウが下がった!」
と発言しておりましたが、
フェイクこそが経済を動かすのです。
と思ったら非常事態宣言をしたことで、これで国家主導体制が整った!と
NYダウが急上昇しました。
現在、COVID-19の影響で大変なことになっておりますが、
医学・経済・政治を学ぶ非常によい機会だと思ってます。
これから更新するごとにCOVID-19についてつぶやいていこうかな。
医学は他人事ではないので、しっかりとした情報です(笑)
もう一つ、経験価値についてです。
資本主義において、経験価値自体は無価値に等しいです。
しかし、日本においては経験価値が無意識に重要視されているような印象を受けます。
なんででしょうかね。
欧米でチップ文化がありますよね。
あれって、サービスに対する感謝の意、
その曖昧な気持ちを具体的な対価として捉えるという発想の上で成り立ってると思います。
けれど、日本人としてやっぱりチップは馴染めないとこがどこかありません?
僕個人としてはお世話になったときは
「次なんらかの形でお返ししなきゃ」と思います。
その場でお金を払うという意識は根付いていません。
しかし、資本主義においてはチップの方が理にかなっているっちゃかなっているのかな
と思ったり、、
経験価値こそこれから重要になってくると僕は信じてます。
すべてのものが「商品」となるなかで
「気持ち」は商品にはできないですよね。
その気持ちを繋いで、親密さを形成していくことを大切にしたいなって思います。
まとめ
産業革命で余剰が拡大したことに伴い、「交換価値」を主義とする市場社会が生まれた。その一方、環境を「交換価値」として扱い、破壊し続けているという問題がある。その解決策は、金融政策の決定過程を民主化することだ。
キーワードは2つ
・余剰
・交換価値と経験価値
最後に著者のヤニス・バルファキスさんの好きな詩を。
「私たちは探検をやめることはない
そしてすべての探検の終わりに
出発した場所にたどりつく
そのときはじめてその場所を知る」