Dr.すてふの備忘録@岐阜

旅と、競馬と、時々医学。

【医学目線で書評】高校生からわかる「資本論」

こんにちは。stayfoolish@研修医です。

@研修医に変更になりました‼‼

@医学生の期間は知る人ぞ知るって感じ(笑)

 

先日、国家試験の発表があり、本日保健所に免許申請をしてきました。

ちゃっかり60,000円を収入印紙として納めまして、、

 

合格者が10,000人とすると

10,000×60,000=600,000,000

ロクオクエンロクオクエン

 

こんなことはさておき、

4月から研修医として日々学んでいきたいと思っております。

責任ある病棟実習、コツコツと精進ですね。

 

 

前回の【医学目線の書評】が自分でも全然わけわからないこと書いてたの反省。。

だって、難しいのだもの。

 

書いていくうちにうまくなっていくっしょ!と楽観。

 

今回は、これです。

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著者について

みなさんおなじみ池上彰さんです。

以前も池上彰さんの書籍を読んだことがありますが、

「反則級にわかりやすい」んです。

 

Youtube大学の中田敦彦さんがそう言われるのもわかります。

 

個人的には、入門はマンガもしくは池上さんとしちゃいたくなるほどわかりやすいです。

もちろん池上さんと親しいわけでもなんでもありません。(笑)

そこだけは断言しておきましょう。

 

注意すべきは、なんでもかんでも池上さん任せにしないことですね。

読解力を養わないといけない今後の世の中ですし。

 

けれど、さすがに医学だけかじったばかりの研修医には

資本論」の原著を読むのは、超絶恐怖でした。ムリデショー

 

池上さんの前にまずマンガから。

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父親を資本家にボロボロにされ、復讐を誓った主人公が

いつのまにか自分自身が資本主義の怪物と化した産業革命後のイギリスでの物語。

 

父親が資本家に「クビだ」と言われたのに

自分自身が資本家となり、労働者に対して「クビだ」と告げているのが、表紙です。

 

 

池上彰さんについてピンポイントレビュー!

座右の銘

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

趣味は地図の収集、ダジャレだそうな。

本は本業だそうです。

 

賢者は歴史に学ぶは刺さりますねー。

作品の概要

「父が娘に語る経済学。」でもふれたように

資本主義によって格差は今もなお拡大し続けています。

 

ごく一部の資本家が労働力を搾取してどんどん巨大化していくのを見守るしかないのか。

 

そもそも資本主義ってなんなんだ!?

(僕の心の中です)

 商品から考えよう

マルクスさんは、資本主義を考える上でまず「商品」から考えようといきなり提案してきます。いきなりです。

 

確かに全てのものが値段がついてるのは、どうして?しかも100均なんかで売られてるものってホントに等価なん?

 

って思ったことはみなさんありませんか?

 

マルクスさん曰く、

商品には価値があり、価値の裏には労働あり、と

 

使用してプラスにならないものは価値があるとは言えないよね。

その価値を生み出しているのは、労働だというのです。

 

つまり労働の量が価値の量を規定しているのです。これを「労働価値説」といいます。

 

商品の裏に隠れた労働ですって。

実際意識するとスーパーマーケットにいったときの商品の見方が変わりました。

 

あじ一匹100円、靴下100円、、

同じ100円なのに、その裏にある労働の種類は違うのに、相対的には100円で一緒なのだ

という社会が現実にはありました。

知らず知らずのうちに生きていたのです。

 

また、価値を決める際に「分業」が生まれました。

分業がなければ、交換価値は生まれません。

それぞれの得意分野で効率的に生産した商品を交換するのが、自然ですよね。

 

 

ここまでをざっくりまとめると

世の中って商品ばっかだよね、商品ってなんだろう。

価値があるから商品なのか、価値の裏には労働があるのか。

なるほどなるほど。

労働力も商品なんよ

資本とは、簡単に言うとお金の集まりといいます。

資本家とは、お金を増やす人のことをいいます。

 

商品を集めてつぎはぎつぎはぎして新たに商品を生産し、お金を増やすことが資本家の役割です。

 

今までの流れを汲むと

商品は労働力なので、過去の労働力に新たに労働力を付け加えて、新たに商品を生産し、それを売ることでお金を増やすのです。

ここで新たに生まれた価値を「剰余価値」といいます。

 

ということは、資本家が新たに生み出す価値は、新たな労働力ということになりません?

驚くべきことに、労働力を買っているのが資本家の現実なのです。

 

 

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こういった図式になります。

 

ここで問題なのは、

労働者は自らの肉体である労働力を売り物にしている点です。

資本家にとって、労働力に過ぎないのでいくらでも替えがききます。

しかし、労働者にとっては唯一無二な労働力は捧げるほかありません。

 

法的には平等で、等価交換、理論的にはそうですが、

実際的には、資本家に労働者はかなうはずはないのです。

 

また労働力は商品なので、その価値は変動します。

労働市場というものが存在するように、資本家と労働者の需要と供給のマーケットがあるのです。

 

まさしく労働力が商品として売られているのです。

 

以上をまとめると

資本家は、労働力を集めて集めて搾取し、新たな価値を作り出していきます。

その動きはとどまることを知りません。 

大量生産の果てに、失業者が

資本家は労働力を買います。

その労働力自体が新たなお金を生み出すからです。

 

よって労働力を搾取すればするほどもうかるのです。

言い方がかなり悪くなってすみません。理論上はそうなってしまうのです。

 

立場的には、資本家>労働者です。両者の争いは必然的です。

労働者はチームを編成し、労働組合を作り、資本家と対立を起こします。

これも必然的な流れなのです。

 

ここの部分の資本論の原文です。

 

「資本は社会によって強制されない限り、労働者の健康と寿命に配慮することはない。」

 

政治、法律によって、労働者は正当に守られるようになります。

皮肉ながら、あくまで資本家と労働者はもともと対等な関係であったはずなのに、、

 

 

分業して価値を生み出すことは少しふれました。

みんなが分業して大量生産することが、商品生産のコストを下げ、結果的に労働者の賃金を下げることに繋がっていきます。

賃金が下がることに反対した労働者の反乱を抑え込もうとするのも資本家の仕事となるのです。

 

その後、機械が登場します。

機械は人間の労働力よりも効率的に作業をします。その上、人間から筋力を使う労働を完全に奪い取ります。

それによって、女性や子供も働くことができるようになり、労働力の供給が増えるのです。

 

つまり、機械の導入によって生産コストは下がり、労働力はさらに安くなるのです。

 

どんどんどんどん格差が生まれて行ってしまいます。

労働力が安くなると、生活が厳しくなる人が増えます。

これはつまり労働力の供給がさらに増えていることになるので、どんどんどんどん労働力は安くなっていってしまうのです。

 

 

これが現在起こっている働いても稼ぎが十分でなくなってきている原理になります。

資本主義は格差を生み出し、失業者は必然となります。

 

以上をまとめると、

 

商品には価値がある。

価値は労働から成る。

労働者が労働力を提供する。

分業が価値を最適化させる。

工場が作られ、大量生産する。

商品生産コストが下がる。

労働者賃金が下がる。

資本家は資本家をも共食いするようになる。

格差が拡大する。

失業者が生まれる。

 

僕なりにまとめるとこういうことかな。

資本主義って結局大丈夫なん?

 今まで、資本主義の欠点ばかりに焦点がいきがちでした。

 

労働力が分業することで最適化されることにより、経済が豊かになってきたのは

紛れもない事実です。

 

また、アリストテレスが言うように、人間は社会的動物です。

資本主義社会には、分業が欠かせず、お互いの協力が必須となります。

みんなで協力して大きなことを成し遂げていくのは、社会的動物としての最高の生きがいになるはずです。

 

また、分業に必要な能力を身に着けること、つまり専門性を持たせるような教育が充実することにもつながります。

 

現在、なにげなく行われている教育は資本主義経済を豊かに生き抜くためだと言い換えることもできるね。

 

しかし、マルクスは資本主義経済には「最後の審判」が下るという。

資本主義が発展することにより、生産性が向上する。

それがごく一部の独占資本化だけに集中していると、経済は決してうまくいかなくなる。

あるいはものすごく不満を持った、力を持った労働者たちが増えてくる。その労働者たちの不満が高まるとそこで革命が起こる。

 

マルクスは、高度に資本主義が発展した末路を予想していたのだ。

絶対王政が崩れ去ったフランス革命を予感させるかのように。

考察・批評

商品を分析することから始まり、労働力が商品となり、それが資本主義のエネルギー源として搾取されていき、資本主義という血まみれの怪物ができあがっていく過程がよくわかりましたね。

 

資本主義は利益追求を第一に考えているので、基本的には消費活動をしなければ、経済は成長しないという現実もあることを知りました。

 

「日本は世界で唯一成功した社会主義

と言われていたことがあったそうです。

 

高度経済成長前において、マルクス経済学を勉強した官僚達が

「労働者の権利を守らなければいつか革命が起きる」

と考えていたため、企業は労働者に対して手厚い福利厚生を施した。

 

これが、終身雇用制に繋がっていたのではと思いますね。

誰でも長い間勤務していれば、自ずと給与が上がっていくことは、第一に競争が激化しないことに繋がります。

 

競争が激化することは、資本主義の大好物です。

その分生産コストが引き下げられ、労働者の賃金も結果的に安く済ませられるのですから。

 

近年、派遣切りを始めとした就職難や低賃金で苦しむ人々が増加したのは、

国がむきだしの資本主義を改良すべく、公共事業を多くし、国家公務員を増やし、社会福祉に注力したのにも関わらず、近年その規制が撤廃されたからだと指摘されています。

 

本当に一口では語れない、難しい問題だと思います。

 

 

医学目線での感想を少し。

 

資本主義において、利益追求が第一です。

医学において利益追求を第一とするのは明らかにまずいです。

 

治験においても、企業主導から医師主導の流れになっていますし、

COI(利益相反)も厳しくなってきています。

(まだ現場に出ていないし、日本の医療現場の現状を知ったかぶりしているだけかも)

 

利益を第一として薬を売り込みにくる製薬会社の巧みな罠に気付かないといけません。

これができるかどうかがまず医師として一人前になれるかの最初のステップかなとも考えています。

 

批判的吟味ですかね。

 

その一方で、皮膚・放射線・病理の画像診断に関してはNew England Journal of Medicineでも5年以内に一般化しうると言われています。

まさしく、資本主義の凌ぎの削りあいでシェアの奪い合いが始まりますね。

けれど、AIを始めとしたDeep learningが、果たして医師、患者さんにどのような影響を及ぼすのかを考えなければいけないと思います。

 

今のこの猶予ある時間でこそ考えておかないといけないと思います。

また、そこに自分の将来やりたいことやるべきことが見えてくるかもしれないとも考えています。

 

話は逸れましたが、

資本主義と医療の接点はちょっと考察が難しかったです。(笑)

まとめ

資本主義によって格差は拡大を続け、ついには革命が起きる。

僕なりの「資本論」の短すぎるまとめです。

 

インドに行ってきて、感じた格差社会

歴史、宗教、経済、資本論で考察してきましたが、

 

これからGDPが成長を続けるアジア、アフリカ諸国が今のアメリカや中国とどのような関係になっていくのか、

 

なんとなくわかったような気もします。

いや言葉にはできません。

もっと勉強します。(笑)