こんにちは、stay foolishです。
【医学目線で書評】シリーズが始まりました。
書籍の紹介とざっくり概要、吟味、をしていきます。
今回は、インドで乞食を目の当たりにしたことがきっかけで
「格差」ってなんだろう。どうしてだろう。
経済的に解決できる問題なのか。そもそも経済ってよくわかってないし。
ということでチョイスしました。
個人的に、経済学の本!を選んでもよかったのですが、概略をつかみたかったもので。
余談になりますが、ある分野の本を選択する前に、漫画版をあらかじめ読むようにしています。
書店でサクッと読んでその分野に興味が持てるかどうかの「ふるい」みたいな。
漫画版は視覚的に印象に残りやすいので、侮れないです。
著者について
ギリシャで財務大臣を務め、ギリシャの経済危機を経験。
EUから財政緊縮策を迫られるなかで、大幅な債務帳消しを主張し、世界的な話題に。
現在はアテネ大学で経済学教授を務めています。
作品の概要
本のタイトル通り、著者が10代の娘に向けて
「経済についてきちんと話すことができるように」という想いから、
できる限り専門用語を使わないで、経済について語ったものです。
よって、経済学のド素人の僕にもわかりやすいないようになってました。
この本は
「この世の中には有り余るほどおカネを持った人がいる一方で、何も持たない人がいるのはなぜだろう?」
という疑問を掘り下げていくことに終始します。
いま、僕たちが真剣に考えなくてはいけないのは、資本主義についてなのです。
5テーマに分けて解説しますが、
結論は、産業革命で余剰が拡大したことに伴い、「交換価値」を主義とする市場社会が生まれた。その一方、環境を「交換価値」として扱い、破壊し続けているという問題がある。その解決策は、金融政策の決定過程を民主化することだ、と読み取りました。
キーワードは2つ
・余剰
・交換価値と経験価値
理解しがたいところをざっくり掘り下げます。
「余剰」が市場社会の原点
「アボリジニはどうして侵略されたのか?」
この答えは「余剰」を手にしたからだと著者は言います。
どういうことか?
人類は遠い昔は、狩猟をして生活していました。
永遠に狩猟で生活できたわけではありません。環境によって獲物の量が元から違います。
環境に恵まれない国では、早々と獲物不足に陥ってしまいます。大ピンチです。
このとき、「農業革命」が起きました。自分たちで作って自分たちで食べようと。
それによって狩猟生活では存在しなかった、「余剰」が生じます。
この余剰が後に通貨や国家統制を生み、市場社会が形作られていきます。
市場社会に武装された国家による侵略には、アボリジニはかなわなかったのです。
「交換価値」と「経験価値」
交換価値とは
全てのものが定量的に測られる=すべてのものが「商品化」される
経験価値とは
値段で測ることができない、親密さや絆の証
市場経済は、交換価値が経験価値を打ち負かして成り立ったものです。
歴史的背景に戻ります。
市場社会は、「格差」を生むようになります。
ごく一部の人が利益を労働者から搾取するようになっていくのです。
この格差が、「産業革命」によってものすごい規模に拡大してしまうのです。
蒸気機関によって労働力がパワーアップされ、その利益は労働力から搾取され、資本家のもとへ集まることになります。
市場社会をざっくり
市場社会と政治は切り離せないものです。
癒着があると言ってるわけではありません(笑)
市場社会は、政治によって統制がとれていないと成り立たないのです。
つまり、民主的な政治判断の下で、ある程度の安全が担保されているのです。
企業が借金を返済できないときは、国が面倒を見るしかありません。
(中央銀行がパッとお金を刷ってくれます)
国家が安定をもたらすことに成功すればするほど、借金を生み出しやすい安全な環境が生まれ、
銀行はますます活発にカネを貸し出すようになります。
こうしてカネは市場社会を回していくのです。
安定してると思いきや
この市場社会というのは、不安定です。
この不安定さは、決して解消されることはありません(笑)
それは市場社会を形成しているのが人間そのものだからです。
単純化すると
景気がよくなったとみんなが信じ込めば、株を買ったり、モノを買う
つまり、経済が循環していきます。その逆もしかりです。
みんなが信じ込むことがミソなのです。ここには、ニュースがかなり影響してきます。
フェイクニュースを信じる人がいて、集団で同じ行動に出れば、それだけで市場社会は揺れ動いてしまいます。
つまり
市場社会で利益を出そうとしている起業家は、他の多くの人たちがどう考えているかを憶測し、その憶測に動かされているのです。
みんなが何を信じ込むかが市場社会を動かすのですね。
環境と市場経済
皮肉な話がある。
山火事が起こると市場社会は間違いなく活性化する。
消火活動、とそれに伴う燃油の消費、インフラの工事、など
経験価値であったはずの環境が交換価値として存在するようになった。
人類は利益追求のために、環境を食い物にしているのは、まぎれもない事実である。
どうすればよいか?
環境を全て交換価値として所有すればよいという考えがある。
全て購入できれば、それ以上の管理はないし、その利益を株のように分割すればよいのではないか。
かろうじてまだ残っている環境の経験価値を一つ残らず交換価値に変えるというのだ。
大切なポイントは
その運営は市場社会ではなく、民主主義に任せるべきと、著者が主張しているところだ。
市場では富の多寡によって、もつ票数が決まってしまうからだ。
これは、お金持ちによって地球自体が所有され、利用されることに直結しかねない。
民主主義は不完全で腐敗しやすいが、ただひとつの解決策に他ならない。
考察・批評
この本のタイトルは
父が娘に語る
「美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい」
経済の話。
非常に読みやすく、歴史的背景や具体例を含めていて興味深かったが、
2回目読んだとき、深い!そこまで壮大な話をしていたのか!
と感激しました。
しかし、あまりに深く壮大なので、まとめるのがかなり難易度高めでした。
書評慣れてきたらもう一回まとめたいと思える一冊でした。
医学目線で感想をつらつらと。2点!
まずはCOVID-19。
現在COVID-19が地球上の経済をかき回しています。
SARS-CoV2によるウイルス感染症です。主な死因は肺炎です。
感染経路は一般的なコロナウイルスと同じく、飛沫感染と接触感染だと言われています。
くしゃみをしたしぶきを触って口にもっていくことでウイルスが体内に侵入します。
よって一般的には、マスクをしていても空気から感染するわけではないので、予防には効果はないです。目から口にかけてのTゾーンを頻回に手で触れることが危険なのです。
一方で、感染者のサージカルマスクは、飛沫感染対策として必要だと言われています。
今回はこの辺でやめておきます(笑)
何が言いたいかというと、
マスクは感染予防のために効果はないというエビデンスがあるにも関わらず
大衆は不安に駆られてマスクの大量購入、転売、等々をするのです。
みんながやるから
という思考が経済を動かすのです。
著者が経済の不安定さは、人間そのものだと著者も言っておりました。
決断における精神心理的な面白さを感じました。
患者さんの決断理由に思いを馳せるのは、大切なことですね。
また先日、トランプ大統領が
「フェイクニュースのせいで、NYダウが下がった!」
と発言しておりましたが、
フェイクこそが経済を動かすのです。
と思ったら非常事態宣言をしたことで、これで国家主導体制が整った!と
NYダウが急上昇しました。
現在、COVID-19の影響で大変なことになっておりますが、
医学・経済・政治を学ぶ非常によい機会だと思ってます。
これから更新するごとにCOVID-19についてつぶやいていこうかな。
医学は他人事ではないので、しっかりとした情報です(笑)
もう一つ、経験価値についてです。
資本主義において、経験価値自体は無価値に等しいです。
しかし、日本においては経験価値が無意識に重要視されているような印象を受けます。
なんででしょうかね。
欧米でチップ文化がありますよね。
あれって、サービスに対する感謝の意、
その曖昧な気持ちを具体的な対価として捉えるという発想の上で成り立ってると思います。
けれど、日本人としてやっぱりチップは馴染めないとこがどこかありません?
僕個人としてはお世話になったときは
「次なんらかの形でお返ししなきゃ」と思います。
その場でお金を払うという意識は根付いていません。
しかし、資本主義においてはチップの方が理にかなっているっちゃかなっているのかな
と思ったり、、
経験価値こそこれから重要になってくると僕は信じてます。
すべてのものが「商品」となるなかで
「気持ち」は商品にはできないですよね。
その気持ちを繋いで、親密さを形成していくことを大切にしたいなって思います。
まとめ
産業革命で余剰が拡大したことに伴い、「交換価値」を主義とする市場社会が生まれた。その一方、環境を「交換価値」として扱い、破壊し続けているという問題がある。その解決策は、金融政策の決定過程を民主化することだ。
キーワードは2つ
・余剰
・交換価値と経験価値
最後に著者のヤニス・バルファキスさんの好きな詩を。
「私たちは探検をやめることはない
そしてすべての探検の終わりに
出発した場所にたどりつく
そのときはじめてその場所を知る」