Dr.すてふの備忘録@岐阜

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【医学目線で書評】FACTFULNESS

こんにちは。stayfoolish@研修医です。

 

10日ぶりのupdateになります。

 

かくいう僕は、オリエンテーションが終わり昨日から糖尿病・内分泌内科での研修がスタートしました。

 

最初からいきなりmistakeを犯してしまいました。

 

「研修医の○○です。糖尿病・内分泌内科で1か月お世話になります。宜しくお願いいします。」

 

そう意気揚々とナースステーションで挨拶をしたものの、ナースさんたちから困惑(+苦笑)の表情。

 

「ここは中7病棟で、糖尿病・内分泌は西7病棟なんだよ。ごめんね。」

 

そしてもう一度挨拶を西7で行い、僕の研修が始まりましたとさ。(笑)

 

気を付けたいのは、しっかりコミュニケーションをとること。今回は間違えはしたものの、SBARを意識して口に出して発言すること、特に多職種に向けてのときは。

 

「謙虚に」というのも心掛けていきたいものです。ケンキョニstay foolish

 

 

ところーで、書評についてですが

3月下旬から4月上旬にかけて、行動経済学、医療行動経済学について学んでいました。ちょいと難しかったのですが、まとめようかなと思っていた矢先、

 

「FACTFULNESS」を貸してもらったので、さっそく読了してしまいました。

 

こりゃもう感無量、、、僕の考え方のバイブルになる1冊だと感じました。最後のあとがきで感極まってついには目頭が熱くなりました。トホホ

 

さっそく解説していきます。

著者について

 スウェーデン生まれで、医師のハンス・ロスリングさん。FACTFULNESSは妻と娘との共著です。

 

FACTFULNESSの副題は

-10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣-

 

医学、統計学、公衆衛生学を学んだハンスさんは、アフリカでの医療に従事した経験から、経済発展・農業・貧困と健康の関連性を意識するように。グローバルヘルス学を発展させ、WHO、UNICEFでアドバイザーを務めていました。ファクトをまとめ上げたギャップマインダー社を設立しています。

 

ハンスさんは、事実を基に世界を見る方法を世界中に広める活動(本、TEDトークなど)を精力的に行っていましたが、、、

 

その矢先、末期の膵臓癌と診断されました。予定されていた講演やテレビ出演、映画製作などをすべてキャンセルし、本の執筆に全精力を注ぎました。

 

しかし、執筆作業中にハンスさんは息を引き取ることとなりました。享年68歳。その後、2人を中心にハンスさんの魂の叫びをようやく一冊の本にまとめあげました。

 

FACTFULNESS

-10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣-

 

 

書評する前から言うのも何ですが、、

この本は是非買って読んでいただきたい。是非とも。世界の見方、そして自分との向き合い方に多大な影響を与えるはずです。

 

ではいきましょう!

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作品の概要

3択クイズから本書は始まります。世界の人口・教育・医療・環境に関する13の3択問題です。下のリンクから是非挑戦してみてください。

 

factquiz.chibicode.com

 

ハンスさんは世界各国の講演で3択問題を行い、正解率を統計しています。ハンスさん曰く「人間ってチンパンジー以下だ。」と。

 

3択問題は確率的には33%で正解します。しかし、地球温暖化の問題を除いて12/13で33%を大きく下回ったことが明らかになったのです。

 

特に、各方面の専門家、俗にいう有識者や高学歴者に関しては一般人口よりも正解率が下がるという傾向も明らかになりました。

 

おやおや、これはこれは、、知識がある人の方が世界を正しく見えていないとはどういうことなのだろうか?

 

ハンスさんは悩み悩んだ挙句、ある考えに至ります。

「知識のupdateがある人でも答えられないのは、人間の本能に原因があるのではないだろうか。」

 

その本能というのが「ドラマティックな本能」とハンスさんは言います。この本能は人間の人間たる所以でもありますが、ファクトを正しく向き合おうとしない一番の原因だと考えています。

 

このFACTFUNESSを読めば、10のドラマティックな本能を論理的に理解することができ、FACTFULNESSな世界の見方を実践することができるでしょう。

 

ハンスさんは大のサーカス好きです。どうしてあんなことができるのだろう、すげー、どうして、すげー、どうして。

 

謙虚さと好奇心が大切だとハンスさんは言います。サーカスを見る視点で「すごい!こんなことができるなんて!」と純粋な興味と驚きを抱きましょう。そういうものだとと決めつけるのではなく、事実を基に事象を見つめていくことの大切さと何より面白さが私の心を掴んではなしません。

 

ハンスさん、ありがとう。

 

10の本能のうち1つだけpickupします。正直pickupするのは、ハンスさんに忍びないのですが、そのうち特に本質的であると思ったものだけpickupです。

 

それは、「分断本能」です。

人間のドラマティックな本能は、対立する二つの事項を対決させることを好みます。アメリカの大統領選、正義か悪か、お金持ちか貧乏か、自国か他国か、資本主義か社会主義か、などなど

 

それぞれの対立を騒ぎ立ててどちらかに感情移入することはまさしくドラマティックです。このドラマティックな本能をメディアに掻き立てられていることが思い込みに繋がっているのではないかとハンスさんは考えます。

 

実際には分断なんてどこにもないのに。。分断本能の影響は世界に蔓延していて、どれもが大幅に歪んだデータの解釈につながってしまう。

 

分断本能を抑えるためにはどうしたらよいだろうか。ハンスさんは「大半の人がどこにいるか探すこと」と言います。

 

実際には分断なんてありません。中間の人がどこいるかを探しましょう。そのためのkeywordは「平均」と「正規分布」です。

 

統計学をかじったことがある人なら、下の正規分布について見たことがあると思います。

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私たちが本能で分断してしまっているのは、右側左側の有意差ありと判断される外れ値なのです。よって大半のひとは中間層を形成していることになります。

 

めちゃくちゃ刺激的です、この図は。シンプルかつ本質的。

 

その上、事象を比較する上では4つのレベルに段階を分けることをハンスさんはオススメしています。分断するのではなく、正規分布を意識して正しくクラス分けをすることが非常に重要になってきます。

 

さらに、自分がどこからの視点で考察しているかも大切です。正規分布の外れ値に属する人の根底にある考えはやはり中間層には受け入れがたいと言わざるを得ません。

 

本書では、具体例を交えて面白く解説されていますが、僕は正規分布を解説するに留めておきます。この正規分布こそが本質的だと思ったからです。


考察・批評

今回は敢えて、本の内容はほとんど書評に組み込んでいません。是非ともお手元で確かめてほしいからです。残りの9つの本能が世界の統計やハンスさんの実体験、特に失敗談から学ぶことができます。

 

僕は、医師として論文を中心に正しく批判的に吟味する能力が必要になってきます。

 

印象に残ったのは、数字も主観的なデータであるということ。

「昨晩で420万人の赤ちゃんが亡くなった。」

420万人は多いですか、少ないですか。

真っ先に自分の住む町の人口と比較した人は多いと思います。(これを行動経済学でアンカリングバイアスといいます。)

 

そこで生じた感情で思考終了するのではなく、その数字を正しく吟味する必要があります。

 

「その数字を比較する他のデータはないんですか?」と問いかけなければなりません。

時間的空間的な比較。例えば、他地域との比較やその数字の時間的推移を知ることは基本的ではありますが、意識して考えているような人はほとんどいないと思います。

 

データを数字で捉えることは大切ですが、そこには主観が必ず入ります。数字を正しく分析したうえで、数字の背景にある物語に着目することで初めて事実を基に世界を見ることができると僕は思います。

 

また、「現在」の捉え方も重要です。現在は止まっているような印象を受けますが、実際はめまぐるしく時間経過とともに変化していっています。2か月で医学知識は倍増する時代ですし。

 

今の事実が明日正しいかどうかはわからないという認識を持ち続けたいと思います。変化し続けるためには、常に知識をupdateして、正しく事実を認識することが必要になります。

 

 

いやー、本当に面白かった。stayfoolish的圧倒的超大作ですよ。

最後にYoutube大学やサラタメさんのFACTFULNESSの書評を貼っておきます。非常に面白い解説になっています。他の人と感想を共有できるのもすごく良いですね。

www.youtube.com

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まとめ

事実を正しく見れないのは、人間の「ドラマティックな本能」のせいです。正規分布を意識することで、本能を抑制することができます。分断するのではなく、クラス分けをしてみることで新たな発見があるのではないでしょうか。

 

from stayfoolish@研修医

 

 

好奇心はstay foolishというブログ名をつけた由来でもあります。そこに新たに「謙虚さ」を加えていきたいと思います。

 

ハンスさんと奥様、娘様、本と通じて出会えたことに感謝しています。

僕も、後輩医師として後に続けるように努力していきます。

 

それでは!