Dr.すてふの備忘録@岐阜

旅と、競馬と、時々医学。

【些末な日常診療】Edwardsiella tarda bacteremia

こんにちは。stay foolish@研修医です。

 

もうそろそろ2020年も終わってしまいます。コロナコロナの1年でしたが、本当にもう変動の1年だったように感じます。

 

外科系レジデント研修も終わりを告げようとしています。秒単位のaccessment⇒managementが必要とされる業界と感じました。

内科的視点での診療をする余裕はありませんでしたが、今から思えば最初で最後の貴重な経験になったかもしれません。気管挿管に関しては、difficult airwayも経験できましたし、気道管理に自信を持つことができたかな。けど、輪状甲状間膜穿刺はさすがに経験できんかったなア。

 

来月からは一変して小児科です。総合診療には、必須の経験になるのでこれまた準備して楽しんでやってこうと。

 

今回の粗末な日常診療ですが、たまたま見かけたEdwardsiella tarda菌血症についてです。

杖歩行週3回デイサービス利用中の91歳男性、肩関節痛を主訴に来院し、肩関節液貯留と炎症反応上昇を認めたため、入院治療となりました。関節穿刺、関節液培養、血液培養採取後、piperacillin/tazobactamが開始され、第1病日に血培2/2でGNRが検出されました。第3病日に、Edwardsiella tardaと判明、、

 

といった感じで、聞いたこともない新生物で、気になったので調べてみました。

google先生青本(第4版!)uptodateはなかなか教えてくれませんでした(泣)。外科レジデントでは一瞬たりともお世話にならなかったPubmedさんに久しぶりに聞いてみました。

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6759260/pdf/18-0518.pdf

 

Edwardsiella tarda Bacteremia, Okayama, Japan, 2005-2016

Shinya Kamiyama et al, Emer ID, Oct 2019

 

倉敷中央病院におけるretrospective studyです。倉敷中央病院は感染症科/総合診療科があるようですね。こういった論文が出るわけです。

 

・182,668セット中の40セット(26患者)からE.tardaが検出された。

・E.tardaの臨床的特徴と30日死亡率を調査した。

 

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・年齢中央値は75歳。

・年齢65歳以上はE.tardaのリスク因子になる?(OR2.7 95%CI 1.11-6.55)

・30日死亡率は12%。

・肝胆道系感染症を起こしやすい。

 

Discussion)

・もともと腸管感染症を起こしやすく、Salmoellaに臨床的特徴が似ている。

・self-limitedで下痢の原因になりやすい。

・抗菌薬感受性は良く、βラクタマーゼを持たないことも。アンピシリンでいける。

 

Limitationはサンプルサイズや単独施設研究が挙げられています。

わい的には

臨床的にはそんなに悪い印象はなく、narrowな抗菌薬で効きそう。だけどやっぱり血管親和性は良いのかな。関節液から検出されるくらいだから。このおじいちゃんもしかしたら刺身とかよく食べててE.tardaをcolonizeさせてたかもしれん。

 

サルモネラは様々な臨床型、E.tardaは魚。臨床的特徴は似ている?親戚的なやつらなんですね。

 

ではまた!